じゃあ、おうちで学べる

本能を呼び覚ますこのコードに、君は抗えるか

テックブログを書く時にやっていること

はじめに

テックブログの執筆プロセスは、エンジニアの経験や知識を活用し、多様な情報源から価値ある内容を抽出し、読者にとって有益な形に整理する作業です。この過程では、自身の業務経験はもちろん、他のブログ記事や技術書籍など、幅広い情報を取り入れ、それらを咀嚼し、独自の視点で再構築します。

この時に困難は伴いますが、同時に自身の考えを整理し、新たなアイデアを生み出す貴重な機会となります。 多くのエンジニアと同様に、私もブログのネタが自然に湧き出てくるタイプではありません。そこで、試行錯誤を重ねて確立した、効果的なブログ執筆方法を皆さんと共有したいと思います。

この方法は、情報の収集から記事の執筆まで、段階的なアプローチを採用しています。各ステップを意識的に踏むことで、自分として納得できる記事を継続的に生み出すことが可能になります。以下に、私が日々実践しているプロセスを詳しく説明していきます。

1. データ収集

まずは、様々な源から幅広く情報を集めることから始めます。そして、実際に手を動かして経験を積みます。これらはすべて、潜在的なブログのネタになります。

日々の業務で気づいたことをメモする

デバッグ中に遭遇した興味深い問題や、その解決プロセスを詳細にメモしましょう。これらの経験は、他のエンジニアにとって貴重な学びとなる可能性があります。Slack、Notion、あるいは物理的なノートなど、自分に合った方法でメモを取る習慣をつけることが重要です。

本を読みまくる

技術書を定期的に読むことで、新しい知識や視点を得ることができます。読んだ本の要点や自分の見解をまとめることで、読者に価値ある情報を提供できます。月に1-2冊のペースで読書し、その内容を整理することをおすすめします。

同僚との会話を大切にする

昼食時や休憩時間の雑談でも、重要なトピックが浮上することがあります。例えば、マイクロサービスの課題について話し合った内容を、より深く掘り下げてブログ記事にすることができます。会話の中で出てきた興味深いポイントをメモする習慣をつけましょう。

業界のニュースや記事を読む

毎日30分程度、技術ブログやニュースをチェックする時間を設けましょう。最新のトレンドや技術動向をまとめた記事を定期的(例えば週1回)に書くことで、自身の知識も整理でき、読者にも価値を提供できます。

実際に手を動かして試してみる

興味のある新しいフレームワークやツールを使って、小規模なプロジェクトを作成してみましょう。この学習過程と気づきをステップバイステップで記事にまとめることで、読者に実践的な情報を提供できます。週末や空き時間を利用して、定期的に新しい技術に触れる機会を作りましょう。

個人プロジェクトで開発する

最近話題のツールや技術を自分のプロジェクトに組み込んでみましょう。この統合プロセスを詳細に記録し、遭遇した課題や解決策、得られた知見をブログ記事にまとめることで、読者に実用的な情報を提供できます。月に1つは新しい技術を個人プロジェクトに取り入れる目標を立てるのも良いでしょう。

コードリーディングを習慣化する

オープンソースのプロジェクトのコードを定期的に読むことで、優れた設計パターンや実装テクニックを学ぶことができます。興味深い発見があれば、それを解説する記事を書いてみましょう。週に1回、30分程度の時間をコードリーディングに充てることをおすすめします。

2. データを創発させる

集めたデータを基に新しい関連性を見出す創造のプロセスは、ブログ記事作成の核心部分です。既存の要素を新しく組み合わせることで、独自の洞察を生み出します。

異なる分野の知識を結びつける

人文科学や自然科学など、エンジニアリング以外の分野の本や記事を読むことで、新しい視点を得ることができます。例えば、心理学の概念をソフトウェアアーキテクチャの設計に応用するなど、意外な関連性を探求し、ブログ記事のユニークなテーマとして扱いましょう。月に1冊は異分野の本を読むことをおすすめします。

原理原則に立ち返る

様々なフレームワークや技術を比較分析する中で、それらの根底にある共通の設計原則や思想を見出すことができます。これらの普遍的な原則をブログの核心テーマとして扱うことで、読者に深い洞察を提供できます。技術書を読む際は、表面的な機能だけでなく、その背後にある設計思想にも注目しましょう。

問題を抽象化する

チームで直面した具体的な問題を一般化し、より広い文脈で捉え直すことで、多くのプロジェクトに適用できる普遍的な課題が見えてくることがあります。この抽象化された問題解決アプローチをブログにまとめることで、様々な状況に応用可能な知見を読者に提供できます。問題に直面したときは、「これは他のどんな場面でも起こりうるか?」と自問する習慣をつけましょう。

技術のクロスオーバーを探す

異なる技術領域や手法を組み合わせることで、新しいアイデアが生まれることがあります。例えば、機械学習の手法をWebアプリケーション開発に適用するなど、異分野の融合を探求し、そのアイデアをブログで提案してみましょう。週に1回、「今取り組んでいる技術は、他のどの分野と組み合わせられるか」を考える時間を設けるのも良いでしょう。

3. 放置する

このステップが意外と大事です。わざとブログのアイデアを放置することで、無意識のうちに考えが熟成されます。

完全に忘れる

ブログのアイデアをメモした後、意図的に1週間程度そのことを考えないようにします。この期間が経過した後に再度内容を見直すと、新鮮な目で客観的に評価できることがあります。Notionやトレロなどのツールを使って、アイデアを整理し、定期的に(例えば週1回)見直す時間を設けるのが効果的です。

全く違う活動に没頭する

技術的な思考から離れ、全く異なる活動に取り組むことで、思わぬインスピレーションを得ることがあります。例えば、自然の中でのアクティビティや芸術活動などに時間を費やしてみましょう。週末や休暇を利用して、定期的に技術以外の活動に没頭する時間を作ることをおすすめします。

眠りにつく直前まで考え、そして手放す

就寝前にブログの構成や内容について考えを巡らせ、その後意識的に手放すことで、睡眠中に無意識的な処理が行われることがあります。翌朝、新たな視点やアイデアが浮かんでくることも少なくありません。寝る前の15分間を「ブログアイデアタイム」として設定し、思考をノートに書き出してから眠るという習慣をつけてみましょう。

4. もう一度考え続けてひらめきを待つ

イデアを温めた後、再び記事の構想に取り組む時間です。この段階では、長期的な視点を持ちつつ、具体的な記事の形を模索します。

過去のメモを読み返す

1ヶ月以上前に書いたアウトラインや断片的なメモを見直すことで、当初気づかなかった重要なポイントが浮かび上がってくることがあります。これらの新たな気づきを記事の核心部分として活用しましょう。月に1回、過去のメモを整理し、再評価する時間を設けることをおすすめします。

技術の未来を想像する

現在の技術トレンドを分析し、5年後、10年後の技術の姿を想像してみましょう。この長期的な視点から現在の技術の使い方を解説することで、読者により価値のある洞察を提供できます。四半期に1回程度、技術の将来予測に関する記事を書くことを目標にしてみてください。

複数の記事案を比較する

同じテーマについて、異なるアプローチや切り口で3つ程度の記事案を考えてみましょう。それぞれの特徴を比較し、最も読者の役に立つと思われる方向性を選択します。この過程で、当初は思いもよらなかった新しい視点が生まれることもあります。記事を書く前に、必ず複数の構成案を作成し、それぞれのメリット・デメリットを評価する習慣をつけましょう。

他の記事との差別化を考える

同じトピックに関する既存の記事を徹底的に調査し、自分の経験や知識を活かして、どのような新しい視点や情報を提供できるかを考えます。他の記事にはない独自の切り口や、より深い洞察を加えることで、記事の価値を高めることができます。記事を書く前に、必ず競合する記事を5つ以上読み、それぞれの特徴をメモし、自分の記事の差別化ポイントを明確にしましょう。

5. 出てきたアイデアの使い方を考える

いよいよ記事の具体的な構成を考える段階です。技術的な正確さを保ちつつ、読みやすく、実用的な内容にすることが重要です。同時に、記事の質を高め、読者との信頼関係を構築するために、以下の点に特に注意を払ってください。

導入部分を工夫する

読者の興味を引くために、記事の冒頭で技術が解決できる身近な問題や、その技術がもたらす具体的なメリットを提示します。例えば、「この技術を使うことで開発時間を30%削減できた」といった具体的な数字や、実際のユースケースを紹介することで、読者の関心を高めることができます。

コードと説明のバランスを取る

技術記事では、コード例と説明文のバランスが重要です。核となる概念を簡潔に説明した後、実際のコード例を示し、そのコードの各部分の詳細な解説を加えます。コードブロックは適度な長さに保ち、長すぎる場合は分割して説明を挟むことで、読者の理解を助けます。

自分の経験を織り交ぜる

技術の解説に加えて、その技術を実際のプロジェクトで使用した際の経験談を盛り込みます。直面した課題、試行錯誤のプロセス、最終的な解決策など、具体的なストーリーを共有することで、読者にとってより実践的で価値ある情報を提供できます。

読者の疑問を予測する

自分がその技術を学んだ時に抱いた疑問や、同僚から受けた質問などをリストアップし、それぞれに答える形で記事を構成します。FAQセクションを設けたり、「よくある間違い」といった項目を追加することで、読者の潜在的な疑問に先回りして答えることができます。

根拠を示し、判断基準を明確にし、批判的思考を持つ

強い主張や比較を行う際は、その根拠と判断基準を明確に示してください。「この方法が最善である」や「AよりBの方が優れている」と述べる場合、なぜそう考えるのか、どのような観点(パフォーマンス、可読性、学習曲線など)で判断したのかを詳細に説明してください。同時に、自説の限界や適用範囲も認識し、「この方法はすべての状況で最適というわけではありません」といった但し書きを加えることで、読者の批判的思考を促します。

また、個人の意見や経験に基づく主張と、客観的な事実や統計データを明確に区別してください。「私の経験では...」や「一般的に言われているのは...」といった前置きを適切に使用することで、読者は情報の性質を正確に理解できます。

まとめと次のステップを示す

記事の最後には、主要ポイントの簡潔なまとめを提供するだけでなく、読者が次に取るべきアクションを具体的に提案します。例えば、その技術をさらに深く学ぶためのリソース、関連する技術やツール、次に挑戦すべき課題などを提示することで、読者の継続的な学習を促進します。

さいごに

テックブログの執筆は、私たちエンジニアにとって、単なる記事作成以上の意味を持つ活動のはずです。日々の経験や学びを整理し、深め、そして誰かと共有する機会として捉えることができます。

完璧を目指すあまり執筆を躊躇するよりも、まずは自分自身が興味を持つテーマから書き始めることが大切だと私は考えています。 このアプローチは、読む人の役に立つかもしれないという期待とともに、執筆者自身の成長にもつながります。

ブログを書く過程で、自分の考えを整理し、新たな視点を得られることもあります。それぞれのエンジニアの経験や視点は異なりますから、自分の言葉で記事を綴ることで、誰かにとって新しい気づきを提供できるかもしれません。

日々の仕事や学習で得た知識や経験をブログにすることで、自分自身の中で新たな発見があったり、個人的な成長を感じたりすることがあります。また、読んでくれた人からのコメントや反応が、さらなる学びのきっかけになることもあります。

最後に、読んでくださっている方々に伝えたいのは、あなたの経験や知識にも必ず誰かにとっての価値があるということです。 小さなことでも、誰かにとっては新しい発見や学びのきっかけになるかもしれません。ためらわずに書いてみることをお勧めします。

テックブログの執筆を通じて、私たち一人一人が少しずつ学び、成長できたらいいなと思っています。あなたの書いた記事が、誰かの助けになるかもしれません。今日から始めてみるのはいかがでしょうか。

各プロセスで生成AIを利用する際の注意点とか書こうと思ったんですけどもう良い時間なのでご飯に行きます。

参考文献と言うか読んだ方がいい本

この本は、テックブログのネタに困ったときというかアイデアが出ない時の救世主です。私はこの本から多大な影響を受けており、このブログで紹介した5つのステップもここから着想を得て実践しています。著者の主張する「新しいアイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」という考え方は、肩の荷が下りるので本当に大切です(いつもはアイディアって言ってるんですけど今回はこの本に敬意を込めてアイデアとしてます)。

エンジニアとして文章を書くには「考える力」が不可欠です。この本は、その力を養うのに最適な一冊です。

みなさん、最後まで読んでくれて本当にありがとうございます。途中で挫折せずに付き合ってくれたことに感謝しています。 読者になってくれたら更に感謝です。Xまでフォロワーしてくれたら泣いているかもしれません。