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「大規模システムの効率的運用の裏側」というイベントに登壇するのでどんなこと話すか整理する #aeon_tech_hub

大規模システム運用の難しさは、その規模と複雑性に起因します。開発する人も多く、運用に関わる人間も多く、そしてシステムの性能や信頼性を評価する人間も多数います。この多様な関係者の利害が複雑に絡み合う中、技術的な課題に加え、人的・組織的な課題も顕著になります。さらに、複雑に構成されたシステムコンポーネントと日々向き合いながら、刻々と変化するビジネスの要求に応えていく必要があります。これらの要因が重なり合い、大規模システムの運用を極めて困難なものにしているのです。

aeon.connpass.com

はじめに

このたび、2024年10月23日に開催予定の「<Platform Engineering、DevOps、CCoE>大規模システムの効率的運用の裏側」というイベントに登壇者としてお呼びいただきました。大規模システムの効率的運用は非常に複雑な課題であり、アンチパターンはあっても画一的な正解はないと考えています。時に、人的・組織的な制約から、アンチパターンと言われるような策を採用せざるを得ない状況もあるでしょう。

このような複雑な背景を持つ大規模システムの運用について議論する機会をいただき、大変光栄に思うとともに、その難しさも痛感しております。

このブログでは、イベントの概要をお伝えするとともに、私が登壇者として特に議論したいと考えているポイントをご紹介します。大規模システムの効率的な運用に関心のある方々に、このイベントが提供する価値と、当日予想される議論の展開について、参考情報を提供できればと思います。

イベント概要と登壇の意気込み

大規模システムを少人数で効率的に、そして安全に運用する工夫」をテーマにしたパネルディスカッションに登壇することになりました。このイベントでは、大規模システムの効率的な運用に関する最新のトレンド実践的なアプローチについて議論したいです。

イベントで期待すること

時間の制約があるため、全ての話題を深く掘り下げることは難しいですが、以下のような内容について議論できればと思っています。

1. 運用設計の重要性の再確認

大規模システムの運用における設計の重要性について、特にプロセスの標準化と自動化について様々な観点から議論が展開されることを期待しています。特に注目したいのは、継続的デリバリーに関する最新トレンドです。これらは、効率的な運用の基盤となるものであり、常に進化し続けています。

同時に、効果的な監視(Monitoring)観測可能性(Observability)確保のベストプラクティスも重要なトピックです。システムの健全性を常に把握し、問題を早期に発見・対処するための手法は、大規模システム運用の要となります。

さらに、実際の現場での継続的改善サイクルの実践例と、それに伴う課題についても深く掘り下げたいと考えています。理論と実践のギャップを埋め、実効性のある改善活動を展開するための知見が共有されることを期待しています。

最後に、大規模システム特有のリスク管理インシデント対応の効果的アプローチについても議論したいと思います。予期せぬ障害や障害への迅速かつ適切な対応は、システムの信頼性維持に不可欠です。

これらのトピックを通じて、参加者の皆様が自身の環境で「次に効率化に取り組むべき観点」を見出すヒントになればと思います。限られた時間ではありますが、できるだけ具体的な事例実践的なアドバイスを共有できるよう努めたいと考えています。運用設計の重要性を再確認し、その効果的な実践方法について深い洞察を得られる場となることを目指したいです。

2. 現代的アプローチによる大規模システム運用の効率化

大規模システムの効率的な運用を実現するためには、Platform EngineeringDevOpsCCoE(Cloud Center of Excellence)、そしてSRE(Site Reliability Engineering)といった現代的なアプローチの統合的な活用が不可欠です。これらの概念は、それぞれが独自の強みを持ちながら、相互に補完し合うことで、システム運用の効率性と信頼性を大きく向上させます。これらをスピーカーの方々がどう展開していくか楽しみです。各概念については概要とおすすめ資料を貼っておきます。

2.1 Platform Engineering

Platform Engineeringは、開発者の生産性向上業務効率化の要となる重要な分野です。議論の中心となるのは、開発者体験(Developer Experience)向上の具体的な方策です。これには、内部プラットフォーム構築ケーススタディセルフサービス化によるデベロッパーの生産性向上が含まれます。また、プラットフォームの標準化と柔軟性のバランスを取ることの重要性も探ります。

これらのトピックについて理解を深めるため、以下の資料も参考にしてほしいです。

cloud.google.com

speakerdeck.com

learning.oreilly.com

speakerdeck.com

2.2 DevOps

DevOpsの実践は、開発と運用の壁を取り払い、より効率的なシステム運用を実現します。ここでは、開発と運用の統合によるメリットと課題、CI/CDの最新プラクティスと導入のポイントについて議論したいです。「You build it, you run it」原則の実践方法や、自動化とツール化の成功事例も重要なトピックとなります。

これらの議論を深めるため、以下の資料も参考にしてほしいです。

learning.oreilly.com

learning.oreilly.com

cloud.google.com

web.devopstopologies.com

www.ryuzee.com

speakerdeck.com

2.3 CCoE(Cloud Center of Excellence)

CCoEは、組織全体のクラウド活用を最適化し、ガバナンスを確立する上で重要な役割を果たします。クラウドベストプラクティスの確立と普及方法、マルチクラウド環境でのガバナンス戦略クラウドコスト最適化の具体的アプローチなどが主要な議論のポイントとなります。

これらのトピックについて、以下の資料も参考にしてほしいです。

aws.amazon.com

techblog.ap-com.co.jp

ca-srg.dev

2.4 SRE(Site Reliability Engineering)[おまけ]

SREは、システムの信頼性を維持しながら、イノベーションを促進するための重要な概念です。SLI(Service Level Indicator)SLO(Service Level Objective)の効果的な設定と運用、エラーバジェットの活用による信頼性とイノベーションのバランス管理について議論したいです。また、トイル(反復的な手作業)の削減戦略とその効果、インシデント管理ポストモーテムの実践についても触れる予定です。

これらのトピックについて、以下の資料も参考にしてほしいです。

www.oreilly.co.jp

speakerdeck.com

speakerdeck.com

syu-m-5151.hatenablog.com

各セッションでの私は、これらの資料を参考にしつつ、最新の事例実践的なアプローチについて議論を展開したいです。参加者の皆様にとって、自組織での適用に役立つ具体的な知見を得られる機会となることを期待しています。

3. 大規模システムの効率的運用の課題と対策についての議論

大規模システムを少人数で効率的に運用するには、技術面だけでなく組織面での工夫も重要です。このセッションでは、実際の運用現場で直面する課題とその対策について、私の経験から得た洞察を共有します。これらのトピックについても登壇者や参加者の皆さまと当日お話ができれば嬉しいです。当日はおそらく具体性の高いテーマについてそれぞれ話すと思うのですが、ここでは私のスタンスを決めておくために抽象的な話をしたいと思います。

また、人の具体的な技術や現場の話を聞く時のコツは相手がどのような立場の人間でどういう悩みをもっているか想像したり知ることで理解が深まります。この点について、コミュニケーションの観点からさらに掘り下げると、以下のような考察ができます。

相手の立場や悩みを想像することで理解が深まるのは、各個人が独自の知識体系や思考の枠組みを持ち、認知バイアスの影響を受けているため、効果的なコミュニケーションには相手の考えや感情を推測する能力と自己の思考を客観視する能力が重要だからです。

これらの点を意識することで、大規模システムの運用に関する議論や情報共有がより実りあるものになると考えています。

3.1 大規模システム運用の現実と組織的課題

理想的な運用モデルと実際の運用現場のギャップについて考察したいです。理論と実践の乖離を埋めるための具体的なアプローチや、現場の声を活かした運用モデルの最適化事例を聞きたいです。また、少人数チームでの大規模システム運用における組織的な課題とその解決策を探りたいです。リソース制約下での効果的なタスク分配と優先順位付け、クロスファンクショナルスキルの育成による柔軟な人員配置などが重要なポイントとなります。

3.2 効率的な運用を支える組織文化の構築

HRT(Humility, Respect, Trust)原則を基盤とした少人数チームの強化方法について議論したいです。チーム内でのオープンなフィードバック文化の醸成や、相互理解と信頼関係を深めるためのチームビルディング活動の重要性を強調したいです。さらに、システム/サービスの価値を組織全体で共有するための効果的なコミュニケーション手法を探りたいです。定期的な全体会議やニュースレターを活用した情報共有、ビジュアライゼーションツールを用いたシステム価値の可視化などが具体的な方策となります。

3.3 段階的アプローチによる運用改善と組織変革

スモールスタートの重要性と組織全体への展開方法を議論したいです。パイロットプロジェクトの選定と成功事例の横展開、段階的な改善プロセスの設計と各フェーズでの評価指標の設定などが重要です。また、少人数チームでの定点観測会の効果的な運営ステークホルダーマネジメントについて考察したいです。データ駆動型の定点観測会の実施方法と成果の可視化、ステークホルダーの期待値管理と効果的な報告体制の構築などが焦点となります。

3.4 大規模システムの効率的な運用設計と組織的活用

少人数チームの生産性を向上させる運用設計の実践事例を聞きたいです。標準化されたプロセスとツールの導入によるチーム効率の向上、自動化を活用した日常的なオペレーションの効率化、チーム間のナレッジ共有を促進する仕組みづくりなどが重要なポイントです。また、組織の成長に合わせた運用設計の進化と最適化について議論したいです。スケーラブルな運用モデルの設計と段階的な導入方法、変化する事業ニーズに柔軟に対応できる運用設計のアプローチ、継続的な改善サイクルを組み込んだ運用設計プロセスの確立などが焦点となります。

3.5 技術的改善の価値を組織全体で共有する方法

信頼性は会話です」という考え方を組織文化に組み込む実践例を聞きたいです。定期的な信頼性レビュー会議の実施と改善点の共有、チーム横断的な信頼性向上タスクフォースの設置などが具体的な方策となります。また、ITIL 4フレームワークを活用した組織横断的な価値創出事例を共有し、ITILのベストプラクティスを組織の特性に合わせてカスタマイズする方法やサービス価値システムの構築と継続的な最適化プロセスについて議論したいです。さらに、少人数チームの技術的改善を経営層に効果的に伝えるテクニックを探りたいです。ビジネス指標と技術指標を紐付けた改善効果の可視化、経営層向けダッシュボードの設計と定期的な報告会の実施などが重要なポイントとなります。

3.6 継続的な改善を推進する組織体制の構築

「始めるより続けることの方が難しい」という現実に対する組織的アプローチを議論したいです。長期的な改善ロードマップの設計と定期的な見直しプロセス、改善活動の成果を評価・表彰する仕組みの導入などが焦点となります。また、少人数チームでの理論、実践、モチベーションのバランスを保つ具体的な方法を探りたいです。学習と実践のサイクルを組み込んだ業務設計、チーム内でのスキルマトリクスの活用と成長機会の創出などが重要なポイントです。

3.7 運用原則の組織への効果的な導入

新しい運用原則の導入事例と組織全体への展開方法を聞きたいです。運用原則の核心的要素の段階的導入計画(例:SREの場合のエラーバジェット概念)、新しい運用文化の醸成とエンジニアリング組織全体への浸透策、様々な運用原則(SRE、DevOps、ITIL等)の基本概念を組織に適用する方法などが焦点となります。また、定量的指標を活用した組織的な意思決定プロセスについて議論し、サービスレベル目標(例:SLO)の設定プロセスとステークホルダーとの合意形成手法、リスクベースの優先順位付けと資源配分のための指標活用(例:エラーバジェット)などを探りたいです。さらに、インシデント管理と事後分析を組織の学習文化に組み込む方法を考察し、責任追及ではなく改善を重視する文化を醸成するための事後分析ガイドラインの策定、インシデントからの学びを組織知識として蓄積・活用するナレッジマネジメントシステムの構築などについて議論したいです。

大規模システムの効率的な運用は、技術と組織の両面からのアプローチが不可欠です。少人数チームでの運用という制約の中で、いかに組織の力を最大限に引き出し、システムの安定性と効率性を両立させるか。この課題に対する様々な視点と解決策について、参加者の皆様と活発な議論ができることを楽しみにしています。

おわりに

このイベントが、大規模システムの効率的な運用に関する深い洞察と実践的な知見を共有される場となることを強く期待しています。Platform Engineering、DevOps、CCoE、SREの概念を適切に組み合わせ、各組織の特性に合わせてカスタマイズする方法について、参加者全員で活発な議論ができることを楽しみにしています。

大規模システムの運用の正解は常に変化し続けるものです。このイベントでの学びを通じて、参加者それぞれが自社のシステム運用を見直し、改善していくきっかけになれば幸いです。

登壇者の一人として、皆様と直接対話し、互いの経験や知見を共有できることを心から楽しみにしています。ぜひ多くの方にご参加いただき、一緒に大規模システムの効率的な運用について語り合いましょう!

イベントの詳細や参加方法については、イベント公式ページをご確認ください。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

なお、このブログは私の思いつくままに書いたため、やや散文的になってしまいました。しかし、ここに記した考えや情報が、大規模システムの運用に関わる方々にとって何かしらの参考になれば幸いです。私自身、このイベントを通じてさらに学びを深め、より洗練された見解を得られることを楽しみにしています。


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